2013-05-04から1日間の記事一覧

Scene32 13:00〜 2/2-A

黒い拳銃。 最初、コンビニで少女が呟いたとおり、ベレッタというのがその銃の名前だ。 少女を見つけると同時に、オレは迷わずベレッタを引き抜いていた。 気配に勘づいたのか、少女が顔をこちらに向ける。 その表情が、固まる。 まるで紐の絡まった操り人形…

Scene32 13:00〜 1/2

最適を選んできたつもりだったのに、気がつけばずっと前から、望みは叶わない方へと進んでいた。 今まで間違い続けていたし、これから、また大きく間違える。 間違いを正せばきっと幸福な未来があると信じていた。でも、いつの間に、こんなところまで来てし…

Scene31 12:55〜

ベレットを走らせる。広さの割に交通量の少ない道だ。 昨日から何度か、子供の頃を思い出していた。 最近は考えないようにしていたのに、記憶とは些細なきっかけで湧き出すものらしい。 過去を見るのは嫌いだった。意識せずとも、彼女の存在が脳裏をちらつく…

Scene29 12:40〜

マンションの駐車場へ戻ると、ベレットのワイパーに何か挟まっていた。 メモ? 広げてみると、意外に大きい。 幼い子が使うノートの1ページを破り取ったもののようだ。 汚い字で羅列された――なんだ、これは。ゲームの技名か? きっと子供の悪戯だ。 普段な…

Scene28 12:15〜 5/5

――生きてるってことは、それだけで奇跡的に幸福なのさ。 そう言っていた父は、オレが人殺しと知れば、どう思うだろう? だが、あの少女が長く生きれば生きるほど、父に危険が及ぶのだ。 組織が彼女に気づいた以上、救う道などないじゃないか。 オレの手で殺…

Scene28 12:15〜 4/5

メールの文面は続く。 貴方の住居スペースから、毛髪と指紋を検出。 共に2人分で、女性のものです。 一方は当社との契約者のデータと一致。もう一方は当社が保有するデータには該当いたしませんでした。 スマートフォンを握る手に、力が入る。 組織はいつも…

Scene28 12:15〜 3/5

エレベーターを降りながら、女性警官の話を反芻する。 もちろん組織を憎く思っていないはずがなかった。しかし、だからといって組織に刃向えるはずもない。 ――父を守る。 そのための最適解を考えれば、自ずと答えは出る。 マンションを出たところで、ポケッ…

Scene28 12:15〜 2/5

「おかしいと思っていたのよ」 彼女の話は続く。 「普通に考えて、『まったく殺さないトレインマン』なんて成立するはずがない。それ自体が組織への反抗と解釈されてもおかしくないもの。なのに、貴方は特別に許されていた。組織の弱みでも握っているのかと…

Scene28 12:15〜 1/5

あの、女性警官のマンションだ。 清潔で簡潔な部屋の真ん中で、彼女は木製の椅子に腰かけていた。 「黒崎正吾」 と彼女は言った。 「きっと、貴方の血縁者。お父さんかしら?」 なぜ、この女性警官がそんなことを言うのか。決まっている。 やはりこの女は、…

Scene26 11:30〜 2/2

トレインマンの特徴は2つだ。 犯行現場に切符を残すこと。 そして、それらの切符には必ず同じ指紋が付着していること。 指紋こそがトレインマンの本体だともいえる。 だから複数のトレインマンが、模倣犯の可能性も疑われず、まるで一人のキャラクターのよ…

Scene26 11:30〜 1/2

ベレットのアクセルを踏み込む度に、エンジンが苦しげに咳き込む。今は頑張ってもらうしかない。 京都。 そこに、あの少女がいるかもしれない。確証はないが、可能性は高いように思う。 高速に入り、吹田のジャンクションを過ぎたところで女性警官から電話が…

Scene24 10:50〜

女性警官は、7回目のコールで出た。 「何? 珍しいわね。貴方から電話なんて」 「急にすまない。ただ、なんとなく仕事の結果が気になって」 「ああ、付録屋の件? 間にあったわよ。貴方の言うとおり。今朝の新聞を見てないの?」 「いや、買いに行く暇がな…

Scene23 10:30〜 5/5

少女の容姿は正確に情報化され、オレの脳内に収められていた。 白い肌、大きな目。そして彼女は、オレと最後に会ったとき荷物を持っていなかった。 逃げるにしても、いったん家に戻りたかったはずだ。あれでは、そんなに遠くまでは行けない。 今は、どこにい…

Scene23 10:30〜 4/5

軽い朝食を終え、改めて、あの少女を思い出す。 オレは彼女を殺すのか、と考える。 ――人を殺さないトレインマンが? そう、誰かに尋ねられた気がした。 幼い少年の声だ。 できれば殺したくなんてないさ、とオレは返す。 ――なら殺さなければいい。 もちろん、…

Scene23 10:30〜 3/5

近くのコンビニに車を止める。 店内に入ると、まだ学生と思しき少年が元気な声で迎えてくれた。 あまり悩まず、たまごサンドとブラックコーヒー、それに新聞を買う。500円玉で釣りがくる。 車に戻ってから、機械的にサンドウィッチを口に入れる。同時に、一…

Scene23 10:30〜 2/5

あの少女――岡田と言ったか。 昨晩から今朝にかけて、彼女がこのマンションに戻った様子はなかった。となれば、オレを警戒して他の場所に姿を隠したのだろうか。現実的な判断だと思う。 でも、どこに? 上手く思い当たらなかった。彼女に関する情報が少なすぎ…

Scene23 10:30〜 1/5

無言で目を覚ます。じんわりと汗をかいていた。 ベレットの運転席だ。 フロントガラス越しにマンションが見える。 曖昧な記憶を繋げてゆく。 そうだ、オレは―― ダッシュボードに置かれた銃を確認する。 ――あの少女に会わなければならない。 back← 全編 →next…

Scene22 ??:??〜

夢を見ていた。 あの公園。 モップに餌をやっている。ふいにモップが、ハムも、オレもそっちのけで遠くへ走ってゆく。顔を上げると、あいつがいる。 吉川は困ったように笑っている。 約束が叶って、オレたちは毎日、並んでこの公園を歩く。 あたたかい夢だ。…

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このブログは、インターネット企画「3D小説」のために用意されたものです。 当「3D小説」はグループSNEの公式twitterアカウント上で、企画責任者である「少年ロケット」が開催いたしました。 この企画は5月5日に、無事、「 Bad end 」の修正を終え…