Scene16 4/5
ずいぶん、悩んだ。
神さまがどこかでオレを試していて、ここであんまり欲張り過ぎると、父が消えてしまうのではないかと思った。もっと具体的には、この父がそれほど金を持っているとは、思えなかった。
でも――
思えばモップに出会ってから、良いことばかりが起こっている。
犬小屋を作るのは楽しかった。それを、吉川が褒めてくれた。聞き込みは難航しているけれど、まだ始めたばかりだ。そして父が帰ってきた。
覚悟を決めて、オレは言った。
「ゲーム」
今、クラスで流行っているソフト。それをプレイするためにはもちろんゲーム機も必要だ。合わせるとかなりの金額になる。
でもゲームがあれば、色々なことが変わる。
それはクラスメイトたちの輪に入る、通行手形のようなものだ。同じゲームをしていれば自然と話題も生まれるだろう。流行っているソフトは通信プレイができるものだから、一緒に遊ぶ機会だって、きっとできる。
そこまでは望み過ぎだ、と思った。
父が帰ってきただけで、充分なのだ。本当に。
やっぱりいいよ。そう言うつもりだった。もっと安い、マンガか何かを頼もう。
オレが口を開く前に、父親は、笑顔で頷いた。
「おう。任せろ!」
この人はゲーム機の値段を知っているのだろうか、と不安になった。
だけど、それは杞憂だった。
30分後にオレは、ぴかぴかのゲーム機と、話題のソフトを手に入れていた。
生まれて初めて、翌日、学校に行くのが、楽しみで仕方がなかった。
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