Scene17 1/3
馬鹿みたいによく晴れた日曜日、オレは初めて、同級生の家を訪れる予定だった。
鞄の中に、確かにゲーム機が入っているのを確認してアパートを出た。これだけは忘れちゃいけない。友達を作るための、重要アイテムなんだから。
約束の時間には早すぎる。モップのところに寄って行こうと思った。
あいつの飼い主はまだ見つかっていない。近所の動物病院を回ってみたけれど、まともな回答は得られてない。焦りもあるけれど。
――慌てるな。
と毎日、自分に言い聞かせている。
野良犬というのは、大げさではなく、命を危険に晒している。まともな大人なら、野良犬の話を聞けば保健所に連絡を入れることもあるだろう。慌てて、騒ぎを大きくしてはいけない。注意を払わなければ、オレのせいであいつを殺してしまう。
とはいえ、時間がないのも事実だった。
いつまでもあの公園にはおいておけない。
次の、あいつの行き場所を考えた方が良いかもしれない。
ふと疑問が湧きあがった。
――オレは、ゲームなんてしてる場合か?
首を振って、誤魔化す。
今日だけだ。今日だけは、許して欲しい。
――同級生の、友達ができそうなんだ。
それはオレにとって、避けようのない誘惑だった。
きっとオレは、幸福な未来への予感に甘えていた。
それなりには現実というものの、硬く冷たい手触りを知っていたはずなのに。
オレは、忘れていた。
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