Scene19 2/3
父に申し訳なかった。
あのゲーム機を、売ってしまったことだ。
あとで謝ろう。嫌われないだろうか? でも、素直に謝るほかに、何も思い浮かばない。
それからようやく、遊ぶ約束をしていた同級生のことを思い出した。約束の時間はもう過ぎている。それに、オレの手元には、友達を作るための道具がない。
動物病院を出ると、相変わらず空は、馬鹿みたいに晴れていた。
それを見上げると、胸の辺りが少しだけすっきりとした。
「よかったよ」
また自分に言い聞かせる。
「モップは家族のところに戻れるんだな。たぶんお腹が空くこともなくってさ。ハッピーエンドだ」
きっと、全部、上手くいったんだ。
そう繰り返すたび、視界が滲んでゆく。
なんだか空が眩しくて、唇を噛む。
軽く目を閉じる。
足音が聞こえた。
瞼を持ち上げると、吉川が駆け出していた。
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