Scene21 1/2
結果的に、ゲーム機を売ってよかったことが、1つだけある。
手元にそれなりの金が残っていたことだ。
父と母が正式に離婚することは、すぐにわかった。父は東京で新しい仕事を始めるのだという。オレもそれについて行くことに、自然と決まっていた。
妙に清々しい気分だった。
――邪魔なのよ。あんたがいるから、結婚できないの。
母の言葉の正解が、ようやくわかった。
正式に離婚が成立して、オレが父の方についていけば、母は幸せなのだ。2人に誕生日を祝ってもらうことはできなくなるけれど、それほど悲観的ではなかった。
――生きてるってことは、それだけで奇跡的に幸福なのさ。
焦らなくていい。長い目で、その夢を叶えていこうと思った。
ゆっくり、じっくりと、間違いを正していこう。
心残りなのは、もちろん吉川のことだった。
あいつと公園で過ごせる時間は、両親の離婚が差し迫る中で、確かな安らぎだった。誕生日には彼女に祝って貰うことさえできた。
引っ越しについては、なかなか彼女には伝えられなかった。結局、正直に話すことができたのは、当日になってからだった。
その時にゲーム機を売った金が役に立った。
わりに潤沢な予算で、彼女への贈り物を選ぶことができたのだから。
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