Scene28 12:15〜 2/5

「おかしいと思っていたのよ」
 彼女の話は続く。
「普通に考えて、『まったく殺さないトレインマン』なんて成立するはずがない。それ自体が組織への反抗と解釈されてもおかしくないもの。なのに、貴方は特別に許されていた。組織の弱みでも握っているのかと思った。でも、正反対だったのね」
 そうだ。
 オレは、弱者だ。
 組織に対して、絶対的な。
「どれだけ反抗的でも、貴方は絶対、組織を裏切れない。そのことを知っているから、組織は貴方を、便利な手駒として使っている」
 オレは首を振る。
 彼女の言葉に否定する部分がなかったとしても、意識を切り替えるために。
「何が言いたいんだ」
「弱者だからこそ、貴方に対する組織のガードは緩い。私は貴方のマンションを知らなかったけれど、貴方は私のマンションを知っていた。他にも私は知らないけれど、貴方なら知っていることがあるんじゃないの?」
「だとしたら、なんだ」
「一緒に立ち向かいましょう」
 彼女はティーカップを置くと、椅子から立ち上がった。
「立ち向かう?」
「そう、組織に」
「組織は個人にどうにかできるものじゃない」
 父の命を危険にさらしてまで、そんな無謀に付き合う気はないし、そもそも今は、もっと重要なことがある。
「あの岡田という少女はどこだ」
 ポケットからベレッタを抜いた。
 女性警官は驚きもせず、真っ直ぐにこちらを見据える。
「ずいぶん前に解放した。今頃は警察じゃない?」


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