Scene24 10:50〜

 女性警官は、7回目のコールで出た。
「何? 珍しいわね。貴方から電話なんて」
「急にすまない。ただ、なんとなく仕事の結果が気になって」
「ああ、付録屋の件? 間にあったわよ。貴方の言うとおり。今朝の新聞を見てないの?」
「いや、買いに行く暇がなかったんだ。たった今まで、組織から急な仕事を任されてて。だから、電話で訊いた方が手っ取り早いかと思って」
「あらそう。それは、お疲れ様。どうもご心配ありがとう」
 彼女は大して興味なさげに応える。
「ああ。――それで今、君はまだ神戸にいるか? できれば会いたいんだけど」
「今から? それは無理よ。知ってるでしょ、私には表の仕事だってあるんだから」
「でもな、オレだって仕事なんだ。君が付録屋を殺したから、あいつの代わりにオレが銃を渡すよう組織から言いつけられた。まったく、奴らは人使いが荒い」
「そうなの?」彼女は一瞬、間を置いて、呟く。「でも、やっぱり無理ね。ごめんなさい。今、私、神戸にいないのよ」
「京都か」
 と、告げた。――質問というより、断定に近い口調で。
 彼女は普段、京都に住むトレインマンだ。
「……いえ」
 彼女は否定したが、その声には僅かな動揺が混じっている。
「君は、神戸にホテルを取っていたはずだ。表の仕事のためだ。今、京都にいるのはおかしい」
 ただの推測が、徐々に確信に近づいてゆく。
「あの少女のためか?」
 彼女から返事はない。
「今から、会いに行く」
 一方的に告げ、電話を切った。


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