Scene16 5/5

 ゲーム機を手に入れたオレを、クラスメイトは簡単に受け入れてくれた。
 なにもかもが、なにもかも、上手く回っているように思えた。
 目先の問題はモップの飼い主捜しだけだ。それに関しても、有効そうな方法を思いついていた。
 きっとポメラニアンを買った人間は金持ちだろう。なら、様々な病気の予防なんかもきちんとしていたはずだ。
 動物病院を回ればモップの飼い主が見つかるのではないかと、オレは考えていた。

 ――生きてるってことは、それだけで奇跡的に幸福なのさ。
 父の言葉を思い出す。
 ――腹が減っていなけりゃなおいい。でも減っていてもいい。次の飯がより美味くなる。
 オレはずっと、腹を空かせていた。
 何もかもが足りていなかった。
 でもようやく、食事にありつけるのだ。きっとこれからは、何もかも上手く行く。
 そう信じていた。
 なのに。
 事件が起こったのは、モップに出会ってから、2週間経った日のことだった。


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