Scene32 13:00〜 1/2

 最適を選んできたつもりだったのに、気がつけばずっと前から、望みは叶わない方へと進んでいた。
 今まで間違い続けていたし、これから、また大きく間違える。
 間違いを正せばきっと幸福な未来があると信じていた。でも、いつの間に、こんなところまで来てしまったのだろう。
 助けてくれ、と誰かを頼る気にはならなかった。唯一の家族である父は今、オレが助けなければいけない立場にある。
 そうだ、とオレはハンドルを強く握る。甘えを振り落とす。
 オレは父を救わなければならない。だから、あの少女――岡田を殺さなければならない。他に選択肢はないんだ。
 適当な裏道、公園の入り口近くで車を降りる。空気は生温い。
 この季節、この場所は、この温度が正しい。
 一歩一歩、あの頃を思い出しながらアスファルトを歩く。
 ゆっくりと、ゆっくりと。
 意識しているのに、今のオレの歩幅では、あっという間に、その入り口まで辿り着いてしまう。
 ベレットが――オレが、公園に来た理由はひとつだ。
 人を殺してしまえば、もう二度と来ることはないだろうから。そんな資格も、最後の希望も、なくなってしまうだろうから。もう一度だけ、見ておきたかったのだ。公園に足を踏み入れる。
 ――そこに、吉川がいた。

 いや、錯覚だ。
 そこにはなぜか、岡田がいた。


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